クリプシュ  ラ・スカラ

オールホーン、3ウェイと言う、中々凄いスピーカーシステムです。以前勤めていた、大型店の試聴室に有り、いつでも聞ける状態でしたが、中々上手く鳴らせません。とにかくじゃじゃ馬。店頭に有った世界の名品と言われているアンプを片っ端から繋いでみてもご機嫌斜め。只残念な事に新品しか扱わない店でしたので、古い名器の類いは試せませんでした。マッキントッシュ、マークレビンソン、アーキュフェーズ、エクスクルーシブ、AGI、SAE、etc、etc・・・・・。

可能性は感じる音なのですが、鳴り切らない。4年程有りましたが、店頭で鳴らないのですから売れる筈も無し。

当時雑誌広告も出していましたので、それにスカラを出した。すると遠方から態々購入に見えた方がいて、即決。(当時はもう生産完了、輸入元にも在庫は無し)

この様な商品は当時も僕が配送セッティングをしていました。店のトラックを運転して納品。購入された方は、年代物の管球アンプを使用。

繋いで驚いた。あんなに店頭で嫌がっていたスカラが、簡単に飼いならされている。買われた方はニコニコ。1時間ほど聞かせてもらい軽いカルチャーショック。以前から半導体アンプ(管球でもNFを掛けたアンプ)には疑問を持っていたが、確信に変わった瞬間。

この店を開けてから、まもなく下取りでスカラの話。1も2も無く、引き取る。さて、あんなに以前は嫌われたスカラが僕の作ったアンプではどう鳴るか興味津々(内心は自信満々)。

鳴らした瞬間拍手喝采。以前に聞かされたあの方の所よりはるかに良い。そりゃーそれなりのアンプは揃っている。一番の違いはプレーヤーなんだけど(当時はQRKにSME3012Rのフルチューン)。

喜んで聞いていたら、何か変。今一エネルギーが出切っていない。後ろに廻ってドライバー周りを見て驚いた。カーボンの吸音材だらけ。前のオーナー、アンプの欠点をカーボンで補っていたらしい。所詮対症療法。吸音材には音楽は理解出来ない。確かに雑音は押さえるが同時に音楽のエッセンスまで吸い取ってしまう。

全部取り外し(吸音材が必要な場合はアンプに問題が有る場合が多い)。

もう一度同じレコードを掛ける。此れですね。スカラが本当にスカラ座で歌いだした。この伸び伸びと鳴る鳴りっぷりはオイロダインでも敵わないかもしれない。

でも、どうしようもない欠点も・・・・・・・。

オールホーンで作っては有るが、ウーハー部は普通のコーンユニット。音量が小さいと振動板の動く量が少なく、ホーンロードが掛からない。結果、小音量では決定的に低音不足。此れさえなければ手放さなかった。と言っても友人に手放したので、いつかは戻ってくるのでは・・・・・・・・・。

あのバスドラの音、あれより凄い音はあれ以来聞いた事が有りません。

2007.4.25

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