ネットワークとは
ネットワークの働きについては、もうお解かりでしょうから、ここでは触れません。CとLを組み合わせてフィルターを形成していますが、その働きを基本に帰って考えてみたいと思います。一般に計算式は出来ていますので、其処に希望の周波数を当て込めばCとLの値が出るように成っています。
ではその計算式は何を表わしているのでしょう。ウーハー用をモデルに考えてみましょう。
12dB/octの標準回路で考えてみます。Lがシリーズに、Cがパラレルにスピーカーに対して入っていますが、良く見てください。この回路の見方はLとCがシリーズにつながり、その中点からスピーカーを出していると見るのが正解です。
つまりLとCの分圧回路で、出来ているのです。上のLは周波数が上がるとインピーダンスが上がり、下のCは周波数が上がるとインピーダンスが下がります。つまり周波数によって分圧比が変わる分圧回路と理解すると判り易くなります。
LとCにはリアクタンスと言い、周波数によって抵抗値が変わる性質が有りますが、その計算式は
XL=2πfL Lのリアクタンス XL=Ω L=H(ヘンリー)
XC=1/2πfC Cのリアクタンス XC=Ω C=F(フラット) Cの単位がFなのに注意
計算しやすいように100Hzクロス。スピーカーのインピーダンスが10Ωで計算してみます。
L=225R/fc C=113000/fcR
これに当てはめて計算しますと L=22,5mH C=113μF に成ります。
其々の、100Hzでのリアクタンスを計算しますと、 L=14,13Ω C=14,09Ω 一番下の桁を四捨五入しますとどちらも14,1Ωと同じ割合になり、丁度1/2の分圧比になります。(πを最後まで正確に計算すればどちらも同じ値に成ります。)
このときのスピーカーの10Ωを含んでの回路全体のインピーダンスを計算しますと19,95Ω。四捨五入しますと20Ωです。
つまり100Hzでのインピーダンスがスピーカーの倍の20Ωで分圧比が1/2に成っているのが判ると思います。
ではこの逆、つまり100Hz以上を受け持つスピーカーを同じ10Ωで計算しますと、同じ数値になります。
つまり、100Hzではお互いのユニットが半々で鳴り、合成インピーダンスはお互いにパラレルの関係ですから、10Ωに成り、合成インピーダンスはユニット単体と同じに成ります。
これが12dB/octのネットワークの姿です。
此処まで来れば、ナゼ正確なインピーダンスが判らなければ、ネットワークが計算できないかが理解できたと思います。
結局、市販のネットワークは、ユニットのインピーダンスが、ある値の時しか正確には働きません。ユニットのインピーダンスは変動します。そのクロスのインピーダンスが判らなければ、正しいネットワークの製作は不可能です。其処までネットワークを詰めてのマルチアンプへ移行するのなら、理解出来ますが、其処まで詰めないで、安易にマルチアンプに走るのは如何なものでしょう。