独り言 U
僕の使っているメインスピーカーは、オイロダインです。それも励磁型と言う、戦前のモデルです。当時良質なマグネット(永久磁石)を作る技術が無く、磁石の換わりにコイルを巻いて電磁石を使っていたと言った、現在では信じられないシステムです。そのコイルも当時ではエナメル線(粗悪なエナメル)が当たり前ですので、数年前に絶縁不良を起こし、現在の線で巻き直しました。こう言った高分子材料は、現在の方が遥かに優れていますので、安心して使うことが出来ます。
オイロダインの周波数特性を測ってみました。低域はバッフルのサイズとの兼ね合いが有りますので、はっきりとは限界が判りませんが、高域に関しては判ります。
測ってみたら大笑い。12kHzまで殆どフラット。これは当時のユニットとしては上出来です。現在の20kHzまで出ますと言って、ネットワークで誤魔化しているユニットよりたいした物です。スピーカーなんて昔から殆ど変わっていないのですから、それも頷けます。
僕が笑ったのは他の事です。当時(戦前)の周辺機器を考えますと、12kHzなんて測定不能でしたでしょう。繋ぐアンプの周波数特性が怪しいのですから。
つまり、オイロダインを作った技術者はドライバーが12kHzも出るなんて知らなかったのではないか?と、思ったら無性に可笑しくなったのです。
作った本人が、その素晴らしさを理解していない。と言うのは結構有る話です。
たとえばレコード。仕事柄レコーディングスタジオには結構出入りしていました。あそこの音はでかいだけで、ニュアンスもへったくれも有りません。(マスターテープでも大した事は有りません。)使用しているスピーカーを見れば納得出来ます。
つまりレコーディングエンジニアの理解している以上の音が、レコードには入っているのです。
これは愉快です。誰も知らないレコードの音をどこまで出せるか。僕のライフワークです。