A−3700

このキットにはかなりお世話に成りました。自分用、お客様用、全部で何台作ったのでしょう?一時は店の中に組み立て前の3700の箱が積んで有りました。

キットとは言っても、かなり変わったキットで、基本は電源とシャシのみ。残りはご自由にお作り下さい。と言うマニアックな物でした。自作マニアにとって一番大変な作業。シャシ加工が殆ど要らず、完成すると市販のLUXの管球アンプと同じデザインに成るのはかなり魅力的。

極普通のキットとしても作れる様に、信号回路の別キットも何種類か用意されていましたし、推薦回路も発表されていました。

僕が最初に作ったのは、推薦回路での2A3シングルアンプでした。当時はマルチアンプでの大掛かりの装置。片ch最低でも数十Wのアンプを使用していましたから、片ch2,5Wの小出力はツィーターが精々と考えて、ミッドハイとハイに使用していました(僕にもこんな時代が有ったのです、笑)。

ある日友人が来て、其のアンプでLE8Tを鳴らしてくれと言うのです。面倒だなと思いながらも接続。友人曰く、マルチよりこちらの方が全然良い。確かにレンジは狭いですがバランスは間違い無く上。音の姿等はマルチでは味わえない物が鳴らされました。

この時の経験が無ければ、数ワットのパワーで十分なんだと気付くのにはもっと時間が掛かったでしょうね。

この時のアンプは、パワー管がWEの252に変わり、アウトプットトランスも大型の物に変わり最終的には友人の所に嫁いでいきました。

その後、このキットを使って何種類も作りましたが、お勧めは6550三結シングルステレオアンプ。初段管に6072、二つのユニットをパラって使い、CR結合で6550へ。OY15の3,5Kシングルトランスでアウト。何の変哲も無いアンプですが20台以上作りました。作ってから20年以上経つのに、全台トラブルも無く活躍しています。中にはオイロダインを鳴らしている物も。

このアンプには面白いエピソードが有ります。ある日あるオーナーが片ch出なくなったと当店へ持ち込んできました。製造後11年経っていました。彼で二代目のオーナーで、前オーナーが5年間使っていた物です。話しを聞くと購入後6年間電源を切った事が無いと言うのです。理由を聞くとマークレビンソンを使っている友人が『アンプが本当の音を出すのには電源を入れてから時間が掛かる。だからマークの電源は切った事が無い。』マークと一緒にされても困るのですが、半導体アンプと真空管アンプの違いを説明して納得してもらいました。で、修理です。チェックの結果、片chの6550がいかれただけで、他は正常。一応用心の為に両chの6550を交換。若干心配だった整流管も交換。あの修理以来10年以上経っていますが、あのアンプ、今でも健在で其の方の処でシッカリと働いています。修理を終えた時『耐久試験をして頂いて、有難う御座いました。』と礼を言ったのは申すまでも有りません。

2007.5.12

PS、LE8Tに負けたマルチシステムはマクソニックが中心。特にいけなかったのが楽器の定位。四畳半に4ウェイのマルチですからまとめるのにはかなり苦労していました。でも8Tと比べると確かに変。各ユニットを単体で鳴らしての位相チェック。で、出てきたのが400〜1,500を持たせている2吋ドライバー。マクソニックの101EX。励磁型のドライバーです。何度チェックしても左右逆相。基本的に配線する時は酔っている場合が多いので、やったかな?と何度もチェック。でもおかしくない?

次の仕事の休みの日。マクソニックへドライバーを持ち込みました。どちらが正常かは判らないが逆相です。二代目社長(当時は部長)がそんな事は絶対にないと言い張るけど兎に角見て貰う。で結論、『済みません、励磁コイルが逆相接続されていました。』

友人が来た時にこの辺がちゃんとしていたら8Tに負けなかったかなー?

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