先日来られたお客様に、このネタを早くアップしてと言われてしまいました。と言うのは其の方の使っているアームは対処済み。自分のアームを確認したいのでしょうね。

さて、写真のパーツです。何処の部分か判りますか?右が元々付いているパーツ。左が僕の作った物です。

答えはアームのウェイトを支えているシャフトです。この部分がアームの後ろ側について、この部分にウェイトを被せます。

此れを作ったきっかけは、EMTのHSD-6を購入した時です。あの頃は僕のアームもまだ出来ていない。プレーヤーにはSME3012Rとクラフトの4400、EMT-997がついていました。

TSD−15と聞き比べをしたいのですが、997には付かない。TSD-15も、クラフトにEMT用のパイプをつけて試聴。TSD-15は997で聞いた時よりも好印象。

続いて、HSD-6。悪いカートリッジでは無いが、TSD-15と比べて特別良くは無い。しいて言うと丸針のTSDには敵わない。

では、SMEで聞いてみたらどうなるのだろうと、SMEにHSD-6を取り付ける。音が違うのは当たり前なのだが、クラフトよりもピントが合って聞こえる。

見た目は、クラフトの方が強度は有りそうなのに、出てくる音は其の逆。クラフトの方が今一ボケてピントが合わない。聞き易いとも言えなくは無いが、欠点を誉め言葉に変えるのはオーディオ雑誌の評論家に任せておけば良い(注1)。

どう聞いてもボケている。原因不明。其の日、家で風呂に入っていた時に気が付いた。『そうだ、クラフトのアームはウェイトシャフトが、ゴムでフローティングされている。あの音のボケ方はゴムで逃げた時の音。』

早速、翌日ウェイトシャフトを旋盤でゴリゴリ。問題は、作るよりも元々のシャフトを外すのがえらい騒ぎ。取り付けビスが接着剤で止めてあり、更にそのビスに合ったドライバーが穴が小さくて入らない。まあ、何とか大騒ぎをして外したのが写真右。ウエイトのスライド板バネを外して、新しく作ったシャフトに取り付け試聴開始。

思ったとおりです。昨日までのボケた音は微塵も無い。今度はSMEと比べるても完全に勝っている。たった此れだけのパーツです。

当時、僕の周りはクラフトのアームが大流行。2本使っている人も居る。其の人達、殆ど全員にシャフトの製作を依頼されたのは言うまでも有りません。

でも、クラフトの名誉の為に書きますが、この時比べたSMEはチューニング済み。共々ノーマルだったら、クラフトが勝ったかも。

このシャフト、クラフトのアームを作った人にも一個進呈。彼にも、ヤハリ意地が有るのでしょうね。とうとう使わずじまいだったのを風の便りに聞きました(笑)。作者に寄ると、このゴムはハウリング対策なのだそうです。確かにSMEよりもハウリングには強い。だけども、ハウリングの原因はキャビの方が大きい。しかし、市販をするとなると、どの様な使い方をされるか判らない。結果必要以上に用心をしてしまう。造る人と使う人との間に、直接の接点の無い商品では妥協せざるを得ないのでしょうね。

 

こんな事を繰り返しているうちに、市販のアームの問題点に気が付いて来て、オリジナルアームが欲しくなって来ました。10数年前の話です。

 

2007.4.2

追記。当時は外注にメッキ屋さんを持っていませんでした。現在は取り引きが有りますので、当時の状態でお使いの方は、ご希望でメッキ加工いたします。ご相談ください。

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注1) 音がボケている。  →  雰囲気が出て柔らかく聞き易い。

    音が硬く疲れる。  →  立ち上がりが良く、アタック音が気持ち良い。