BMはウォルブが出て当たり前、なんて言ってはばからないディーラーが居ます。其れは完全に整備不良。其処を治す腕の無いのを棚に上げているに過ぎません。

ステアリングベアリングは消耗品です。ある程度の距離を走ったら、交換です。僕も今回の改造で交換しました。古いベアリングを抜くには、馴染みのバイク屋さんで専用工具を借り、いたってスムーズに。ヤハリ普段から仲良しのバイク屋さんを持っていると助かります。

また、交換したてのベアリングは位置が落ち付くのに、ある程度の走行は必須。組み立てでキッチリ調整しても、最初の100km程で、緩くなるのが極普通に起きます。ヤハリ、ちょっとした段差でコツンと小さな音が出てきました。緩んできたようです。

再調整をしますが、一般の雑誌に書いて有る方法ではBMの場合は上手く出来ません。ナゼかと言うと、まずベアリング上側のインナー。ステムシャフトに軽圧入です。ですから締める時は良いのですが、緩める時は単にナットを緩めるだけでは緩みません。

更に、アンダーブラケットとインナーチューブの勘合がきつく、ロックボルトを緩めただけではダメです。

では、最初から。

まず、写真の様にトップナットを緩めます。次に、アンダーブラケットのインナーチューブを締めているボルトを取り去ります。

ベアリングを馴染ませる為、リングナットはチョイ締め過ぎまで締めてから緩めるのですが、此処が問題。ステムシャフトとベアリングの勘合はきついので、ナットを緩めてもベアリングは緩みません。結果、ナットを緩めてもステアリングはきついまま。

で、もう一度トップナットを軽く締め(最後まで締めない、1/2回転程残しておく)、ナットの頭をプラスチックハンマーでガン。ほら、シャフトが下がって、ガタが出たでしょう。

其処で、ガタが無くなるまでリングナットを締めるのですが、完全にガタが無くなるまで締めてから、トップナットを締めると締め過ぎ状態に成ります。リングナットだけでは若干ガタが有り、トップナットを締めると丁度良くなる位置を捜すのです。で、締め過ぎて緩めたら、またトップナットをハンマーでガン。

で、此処でもう一つの作業が。ステアリングナットの調整と言う事は、ステアリングブラケット上下間寸法が変わると言う事なのです。一般のアンダーブラケットは締め付けネジを緩めると、インナーチューブはユルユルに。ところがBMはキツイ。で、ナットの調整の度に、アンダーブラケットの隙間を広げてやり、インナーチューブに掛かる、ストレスを逃がしてやるのです。

つまり、ナットの調整、其の度にアンダーブラケットの隙間を広げる。締める方向はそれだけ。緩める方向には更にハンマーでガン。

この繰り返しで、最適ポイントを探します。リングナットの回転5°で変わりますので、兎に角時間が掛かります。でも、きちんと調整が出来たBMを運転したら、苦労は忘れますよ。

 

注)リングナットのトルクレンチでの調整は完全にNGです。リングナットを最後まで締めてトップナットを締めると締め過ぎ状態に成ります。

2007.3.28

追記。一般にヘッドの調整で締め過ぎますとスネーキング(蛇行)、緩いとウォルブ(ハンドルのブレ)が出易く成ります。ウォルブはフロントタイヤのパターンがライン状の物のほうが出にくいと一般には言われています。

ウォルブ対策にはステアリングダンパーが効果的ですが、あくまでも対症療法です。

2007.8.19

追記。リングナットの微調整をする場合は、フックレンチですと廻し過ぎてしまいます。貫通のマイナスドライバーや細長い鉄棒などの先を溝にあてがい、お尻をハンマーで軽くコツコツした方が、微妙な調整がし易いです。何しろ溝の幅の半分廻しただけで変わりますから。

2007.8.20

追記。リングナットの調整は、トップナットの締め方で変わる筈が無いとのご意見を頂きましたので、其れについての説明です。確かにステアリングリングナットとステムシャフトのネジとの間にクリアランスゼロでしたら、この方のご意見はもっともです。ところがネジには必ずクリアランスが有ります。無かったら廻りません。

で、リングナットを締めた状態を想像してください(スキャナーを持っていないので図面はご勘弁を)。リングナットを締め切るとリングナットは上に押された状態に成ります。つまりリングナットのネジ面の上側とステムシャフトネジ面下側のねじ山が接触している形です。

この状態から、ステムトップナットを締め付けます。もちろん高トルクです。するとシャフトは上に引き上げられリングナットとの接触面は逆に成ります(ダブルナットの関係です)。

結果、リングナットは最初のセット位置よりも下がった事に成り、ベアリングに掛かる応力は大きくなり、ベアリングの動きはきつく成ります。

つまり、最初にリングナットはガタが有る状態で組むと言うのは、ねじ山のガタ分なのです。勿論それ以外にも若干寸法を狂わす要因は有りますが、ネジのガタが一番大きな要因です。

機械物の調整の基本です。動く所はガタ無くスムーズに。動いていけない所はシッカリと。たった此れだけですが難しい(笑)。

ステアリングは自由に動けなければいけません。直進時も細かく左右に動いてバイクの直進を助けているのです。此れを妨げては直進も出来なく成ります。かと言ってガタが有ると、ステアリングの動く中心が不安定に成りますので、ハンドルのブレの原因に成ります。ガタ無くスムーズに。これに如何に近付けるかの調整です。

テーパーローラーベアリングは剛性が高く逃げが有りません。其の為に合った位置がピンポイントに成るのはいかしかた有りません。

現在のピンキー号は両手放しをしても直進しますし、ウォルブの発生も認められません。特別な事は何もやっていません。単に車体寸法を出来る限り正確にし、ステアリングベアリングの調整に神経を使っただけです。

2007.11.23

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