さて、これからが本題です。上のスプリングの右側がノーマル(新品)、左側が僕が特注で作らせた物です。何故こんな事をしたかと言いますと、3000rpm付近の不愉快な振動です。僕のささやかな経験では、点火時期が早すぎた時の振動とよく似ています。つまり点火時期を早くしすぎますと、ピストンが上がり切らないうちに、燃焼室の圧力が上がりすぎ、ピストンを押し戻そうとします。僕はこの現象を、ピストンが叩かれると表現しています。
勘違いされている方が多いので、あえて書きますが、高性能(燃焼室の形状が良い)エンジンは適正点火時期は遅く成ります。要するにプラグが点火してから、燃え切るまでの時間が短いのですから早く点火する必要が有りません。点火時期を早くしないとパワーの出ないエンジンは、燃焼室の形状が悪く、燃焼に時間の掛かるエンジンです。一瞬で燃えてしまうのでしたら、点火時期は上死点が理想です。点火時期が早すぎると、ピストンの上昇中に燃焼室の圧力が上がってしまうのですから、パワーロスも大きく成ります。ツインプラグにすると燃焼時間が短く成りますから、点火時期は遅めにするのが普通です。
圧縮比を上げても燃焼室が小さくなるので、適正点火時期は遅めに成ります。そのままの点火時期ですと、振動の多い(ピストンを叩く)エンジンになってしまいます。ヨシムラでも圧縮を上げたエンジンは点火時期を遅らせていると聞いています。
ボクサーに話を戻しますと、アイドリングや其のチョット上での嫌な振動は感じられません。5000以上廻しても同じです。2500〜3500rpm辺りに嫌な振動を感じます。(ピストンを叩かれているかな?)
と言う事は、進角ゼロと最大進角はOK。途中の進角を遅らせれば良い。その考えでスプリングを作りました。勿論一発で出来るはずは有りません。数種類のスプリングを業者に発注し、実際に取り付けて進角データーを取り、試走。其れの繰り返しです。
其の中で、一番良い結果が出たのが、左のスプリングです。具体的な進角特性を言いますと、進角開始が1500rpm(ノーマルと同じ)。進角終了が3500〜3700rpm。ノーマルスプリングはサービスマニュアルでは3000rpmと成っていますが、実測では2500〜2700rpmで進角が終了しています。
走った結果を、一言で言うとシルキー。エンジンが嫌がりません。アイドリングから高回転まで、スムーズに吹き上がっていきます。パワーが落ちたと言う感じも有りません。友人数人のトリガーも替えましたが、皆元に戻さない所を見ると、成功のようです。
ちなみに、スプリング屋さんに発注する時は、0,6mm線で12巻き、巻き径はノーマルと同じと頼んでください。それで僕のと同じになる筈です。ただスプリング屋さんによって、若干のくせが有りますので、点火時期を確認して、少々の手加減が必要になるかもしれません。
2006.1.12