MCカートリッジを使うとき、必用に成るのが昇圧トランスかヘッドアンプ。僕自身はヘッドアンプを使っているくせに実はトランス派。今のヘッドアンプを作らざるを得ない状態に僕を追い詰めたのが写真のトランス。TRIAD HS-1。本来はライントランス、またはマイクロフォン用。伊藤喜多男氏のパワーアンプの入力にも使われていました。

このトランスが生産終了。代わりのトランスを、当時付き合っていたトランス屋に特注しても、思った物が出来上がって来ない。

試作品を数種類作らせたが、このHS-1と肩を並べる物が出来ない。手に入らない物を店頭で使っているのは単なる見せびらかし。

最後の一組も手放してさあ困った。自分ではトランスは作れないし・・・・・・・。苦し紛れで作ったのが真空管式のヘッドアンプ。CR結合ではどうしてもカップリングコンデンサーのキャラクターが目立ってNG。出力にトランスを入れたので、予定よりかなり高い物に・・・・・・・・・。

で、このHS-1です。使い方の難しいトランスです。一般の47kΩ負荷では本領を発揮しません。二次はオープンか高抵抗受け。

一次は150Ωで使います。それ以外は600Ω以外はNG。600では昇圧比が稼げませんが103あたりだと良いかも(やったことは無い)。ナゼそれ以外が悪いかと言うと、トランスのタップを使うので遊んでしまう巻き線が出来てしまいます。これをするとどんなトランスも本来の性能を発揮出来ません。(最近、僕愛用のトランスはタップが無く、巻き線の組み合わせで昇圧比を調整します。)

有る有名ガレージメーカーが、VRの代わりに段間トランスからタップを沢山出し、音量調整をしているのを見かけましたが、完全にブッブーー。あれをやると音量と同時に音質まで変わってしまいます。

(解決方法はこちら

MCトランスはシャシも大切です。シャシ一つで、同じトランスがウッソーと言う程変わります。

勿論アースの取り方も大切。以前有名なガレージメーカー(さっきとは別、ウェスタンの型番を平気でアンプに使用して作っていましたね、笑)製のMCトランス。

トランス本体はこのHS-1を使っている。其れを愛用しているユーザーの所へ行きました。何かハムっぽい。MCトランスを外すと出ない。あの頃の僕は其処のメーカーを信用していたので、そんなバカな?

でも、良く見るとピン端子がスィッチクラフト。この端子は絶縁が無いベタアースタイプ。エーーー、と思って内部を見せてもらう。当たり前ですねハムって。一次も二次も無く単にベタアース。これじゃハムらない訳は無い。

トランスをお預かりして、ピン端子を絶縁リングの付いているものに交換。内部配線材はワザと同じ物を使用。単なるアースの取り回しだけを変えてユーザー宅へ。

其の方、目を丸くしていましたね。何をやったんだって。ハムが無くなっただけでなく、再生音もベールが取れた感じです。何もしていません。配線の引き回しを変えただけです。って言ったけど信用してもらえたかどうか・・・・・。

マニアの方はどう言う訳か、どこかへ言って試聴とか、人の家へ行って其処の音を聞きたがる。で、何が判るんですか?ある処でHS-1を聞いて酷い音がしていたからあれはダメだと言っている人に会いました。でも、其処で鳴っている音の中から、HS-1だけの音が判りますか?僕には判りません。トータルで良く鳴っているか、ダメかは判断できますが。

其の方の処へ、僕の作った(写真の仕様)HS-1を持ち込んで悪戯をしたのは言うまでも有りません(笑)。

ちなみに、僕の経験では、トランスとカートリッジの相性は有りません。良質なトランスは、どんなカートリッジでも、大丈夫です。只貧相なカートリッジの弱点も曝け出してしまうだけです。

ついでに、市販アンプ内蔵のヘッドアンプ、MCトランスで良質な物に出会った事が有りません。良質な単品を使うと、カートリッジの評価が変わります。

2007.3.11

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